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PROJECT
STORYプロジェクトストーリー

超低燃費エンジンとHEVシステムをONE TEAMで開発「次世代パワートレーンの
明日をつくる熱き技術者達」

2021年11月。ダイハツ工業のカーボンニュートラル社会実現に向けた挑戦、そして自動車業界の電動化推進トレンドへの一つの答えとなる「新ロッキー」が発売された。その心臓部として新開発されたのは、クラストップレベルの低燃費(20.7km/L(※))エンジン「WA-VE」。さらにこのエンジンをHEV用に最適化した「WA-VEX」と高性能電動化ユニットを融合し、28.0km/L(※)という極めて高い燃費性能を実現したハイブリッドパワートレーンだ。その開発の裏には、エンジン開発とHEV開発部門が互いに最高レベルのクルマづくりを目指して結束し、車両開発部門も含めてONE TEAMで挑んだ物語があった。
(※)WLTCモード

パワートレーン開発部 パワートレーン企画室
WAエンジン チーフエンジニア

H.H

構造工学系 理工学専攻修了
1997年入社

パワートレーン開発部 パワートレーン企画室
HEV(ハイブリッド)システム 
チーフエンジニア

H.T

工学研究科 航空宇宙工学専攻修了
1997年入社

ダイハツの未来を担う新しいエンジン、
ダイハツの量産車初となるHEVシステムの開発がスタート

自動車業界全体のカーボンニュートラル対応や電動化シフトを背景に、ダイハツは「DNGA(ディー・エヌ・ジー・エー=ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」による新しいクルマづくりを打ち出し、技術革新や新車開発が加速化。パワートレーン開発部門でも、より高い環境性能を実現させる新しいHEVシステムと、その実力を向上させる新型エンジン開発の必要性に駆られ、模索が続いていた。こうした中、2017年頃、小型車への搭載を想定した新たなパワートレーン開発プロジェクトが立ち上がる。

会社としても久しぶりの新型エンジンの開発かつ、新しい挑戦となる小型車向けハイブリッドパワートレーンの開発プロジェクトにおいて、エンジン開発のチーフエンジニアにH.Hさんが、電動化を担うHEVシステム開発のチーフエンジニアにH.Tさんがアサインされた。2人は長年パワートレーン開発に携わり、同期として互いに技術を磨き上げてきた間柄。プロジェクトスタート時には、「彼なら、この新しく、厳しい開発をきっとやれる、やりぬいてくれる」という感情を互いに抱いていたという。

「ダイハツがカーボンニュートラル達成のために貢献できることは何か?とエンジニアとして考える中で、以前から1.2Lの低燃費エンジンの必要性を社内に提案しており、その新型エンジンの開発を任されことは光栄でした。絶対に、ガソリンエンジンでもより高い燃費性能と、環境対応を実現するという使命感を抱きながら開発に臨みました」(H.H)

「もともとエンジン開発部門にいて、電動化を早く実現しなければという思いはずっとありました。そうした中でHEV システム開発のチーフエンジニアに選ばれたときは、電動化ミッションの達成は当然として、ダイハツらしいHEVとはどうあるべきか、お客様や社会に応えるにはどうすればよいか、という思いも持って開発に参加しました」(H.T)

それぞれが、様々な思いと使命を抱き、いよいよプロジェクトは動き出した。

性能も価格も、すべてNO.1を目指して、
各部門でトライ&エラーに取り組む

開発が始まり、それぞれの現場では、日々エンジニア達がいくつもの課題に挑んでいた。

まずエンジン開発部門では、目標性能を実現できる部品仕様がどういったものであるか、ということをシミュレーションで検証していくMBD開発(Model-Based-Development=モデルベース開発)を取り入れ、燃焼効率に影響するシリンダヘッドのポート(吸気・排気通路)開発などを行った。こうした新しい開発手法でコストダウンや開発期間の短縮、さらにデータによる精度の高い開発に取り組み、0.01km/Lでも燃費を向上させるための挑戦が続く。

「エンジン開発では、シンプルで高い燃費性能を実現するということを重視しました。様々な新開発部品・装備などを使えば、当然大きな性能アップは図れますが、それだとコストも上がってしまい、お客様に選んでもらえません。何より、私たちがいつも大切にしている良品廉価という精神に反します。このことは、ハイブリッドにしても同じでした」(H.H)

高性能かつ低価格を目指すという、相反する目標の両立にエンジン開発部門が奮闘する一方、HEVシステム開発部門では、社内にまだ電動化の知見が少ないことから技術面での課題が多くあった。そのため電動化で先行するグループ企業に教えを請いつつ、どのHEVシステムを選択すべきかの検討から始めた。

その後、課題となったのは、本来HEVのメリットでもある自由度の高さだった。HEVは、従来のガソリン車よりシステムの自由度が高く、そのクルマの商品性にあわせたセッティングが可能な分、振り幅も大きくなる。そのため、開発に携わる部門全体で方向性を統一しなければならないが、それぞれの部門が担当する機能を最大化しようとするなど、なかなか方向性が一本化できない状況にあった。

「最初は、各専門分野のエキスパート達が互いに意見を主張し、うまく進まず・・・。ダイハツ量産車初の本格HEVシステムを手がけるという、それぞれの熱い思いを感じる一方、新しい取り組みに対しても従来の仕事の延長線上で、各部門の仕事のやり方や価値観を引きずっているようにも思いました。そんな中で私が思ったのは、まずコミュニケーションが必要。人と人とがつながる場をつくり、皆が同じビジョンを持てるようにしなければと思いました。」(H.T)

部門を越えてエンジニアがつながり
ONE TEAMでミッションを達成

H.Tさんが実行したのは、エンジニア達が部門の垣根を越えてコミュニケーションをとれる場づくり。具体的には、週に1、2回関係者全員が集まり、顔を合わせて話し合う機会を設けた。回を重ねるごとに、エンジニア同士の部門を越えた理解が深まり、次第に一体感が生まれていく。

「“急がば回れ”ではないですが、この場づくりを通して、それまでとは格段に一体感が増し、開発がスムーズになりました。このとき私が感じたのは、既存の業務に対応するだけなら縦割りの組織の方が効率的だが、新しい挑戦に取り組む場合は横のつながり、もしくは全く違う建て付けの組織でないといけないということでした。その点、ダイハツ工業はコンパクトな組織なので、今回のような柔軟な組織変容がしやすいんだということにも気づけましたね」(H.T)

「車両、エンジン、HEVシステム、評価、実験といった今まで個人レベルで深い接点を持つことは難しいと思っていた各部門の人たちが、今回のHEVシステム開発の取り組みから、私達エンジン開発部門も含めて、一つになるという貴重な経験をしました。当初から同じものをつくるという共通の目的を持ち開発を行っていたわけですがこの頃から、本当の意味で私達はONE TEAMになったんだと思いました」(H.H)

電動化への挑戦という目標のもと一つにまとまったプロジェクトチームの開発は、これ以降、さらに加速度を増していく。そうして約3年近い月日をかけ、ダイハツの新しいガソリンエンジンとハイブリッドパワートレーンはついに完成。プロジェクトメンバーは、自分達の挑戦を称え合った。そして経営陣からは、「ダイハツのこれからにつながる、全く新しいパワートレーン、ダイハツ量産車初のハイブリッドをよくぞつくりあげてくれた」との言葉をかけられたのだった。

エピローグ

2021年3月、H.Hさんは、滋賀工場で先行開発を終えていたインドネシア向けの同型エンジンが製造され、送り出されようとする様子を感慨深く眺めていた。

同じ頃、H.Tさんは、HEV版新ロッキーの最終的な走行テストドライバーの一人として、大阪から寒冷地試験場のある北海道に向けて街を走っていた。クルマから伝わるハイブリッド独特の感触に仲間たちと成し遂げた確かな手応えを感じ、「お客様がどんな気持ちでこのクルマに乗るのだろうか?」と思いを馳せながら、スマートペダルの心地よい減速Gを感じていた・・・。

走行テストの様子

プロジェクトを終えて、今思うこと
次代を担うエンジニア達に向けて

2021年11月、今回新開発されたパワートレーンを搭載した新ロッキーの国内販売が開始され、業界内外から高い評価を得ている。ダイハツ工業では、このプロジェクト以降も引き続き、今回開発された次世代を担うパワートレーンを他の小型車種へと展開する動きが計画されている。その先には、軽自動車へのハイブリット搭載、BEV開発、あるいはまた新しい視点のモビリティ開発につながっていくことは間違いない。そんなダイハツの未来につながるプロジェクトに関わった2人に、現在の心境とこれからについて聞いてみた。

「開発が始まった最初のシーンを今でも鮮明に覚えているくらい、私にとって思い入れのあるプロジェクトでした。このプロジェクトを通して一番の収穫は、開発メンバーが様々な困難を乗り越え、クルマづくりのプロフェッショナルとして大きく成長したことですね。特に当時入社2年目だった社員が、今や新入社員のトレーナーになり、エンジンに関する研修で指導している姿を見たときは、本当に人材が育っているなと実感しました。経験が人を成長させるということに改めて気づかされました。」(H.H)

「プロジェクトを通して、大きく変化を感じたのは、やはり多くの部門の人が組織の垣根を跳び越えてONE TEAMになれたことです。もともとダイハツ工業は、コンパクトな組織なので横のつながりはあったのですが、今回の新たなミッションに挑む中で、今まで以上に結束が強まったと感じています。プロジェクトを始めるにあたり、高杉晋作の辞世の句といわれている『面白きこともなき世を面白く・・・』を紹介し、みんなにも話をさせてもらいましたが、何事も考え方次第だと思います。次世代のエンジニアの皆さんには何事もポジティブに考えて取り組んでいって欲しいですし、そういう場を提供するのが我々の役目だと思っています。」(H.T)