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ダイハツ工業の次代をつくる新しい技術と仕組みを!「全社員が当たり前にAIを使える未来をつくる」

ダイハツ工業の全社員がExcelやメールを使うように、当たり前にAIを使いこなし、業務効率化や新事業創出に活用できるように・・・。そんな一人の社員の未来への思いから始まった機械学習・AIに関する勉強会を契機として、その後、その思いに共感した多くの社員たちが参加。今では社内の様々な部門でAI導入に向けた活動が活発化する程に大きなムーブメントとなった。そして今、ダイハツ工業×AIは、さらなる進化を遂げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)導入へと歩を進めようとしている。これから語るのは、AI推進に挑んだ社員達のストーリーだ。

コーポレート統括本部 DX推進室

M.T

理工学部 機械工学科卒業(2007年)
経営管理研究科修了(2017年)
2007年入社

コーポレート統括本部 DX推進室

Y.A

工学研究科 経営工学専攻修了
2020年入社

車両性能開発部 動力制御開発室

M.S

工学研究科 電気工学専攻修了
2006年入社

AIの将来性に注目し、ワーキンググループ
での勉強をわずか3人でスタート

DX(デジタルトランスフォーメーション)、AI、機械学習など、先進のIT技術を活用した業務改革や企業変革の必要性が、世の中でも注目され始めた2017年頃。ダイハツ工業の中では、この新しい動きを敏感に察知すると同時に、大きな危機感を感じた社員達がいた。 その中の一人が、M.Tさん。当時は開発部門のエンジニアとしてエンジン開発をする中で、様々な企業のAIを駆使した業務効率化事例をニュースで聞くたびに、ダイハツ工業内では、まったく盛り上がっていないことに将来への不安とも、危機感とも言える思いを抱いていたという。

「その頃、エンジン開発の現場では、MBD(Model Based Development;モデルベース開発)という、コンピュータ上で再現した部品等のモデルを用いて、シミュレーションや解析を行う新しい開発手法を取り入れていましたが、ここにAIを組み込み、収集・分析したデータを元に高精度での判断や開発を可能にする、すなわちデータドリブンによる開発ができたら、より効率的でスピーディな開発ができるのでは?と考えていました。そうでないと将来、競合他社に打ち勝つことはできなくなるという危機感や焦りもありました」

そうして、M.Tさんは、普段の開発業務とは別に「機械学習ワーキンググループ」を立ち上げ、自らが代表となってスタート。「AIはこれから絶対に必要となる」との熱い思いを抱き開催した最初の勉強会だったが、参加者は自分を入れてわずか3人。早速、厳しい現実に直面したのだった。

理解されない苦労、逆風にも負けない姿勢に
共鳴した仲間達が次々と集い始める

ワーキンググループに集まったメンバーは、そもそもAIや関連する機械学習、さらにベースとなるプログラミングも含めて、全く知見がない状態。AI活用の前に基礎から学習する必要があった。

「最初は、まずAIを知るということもありましたが、自分達は世の中に比べて遅れているという自覚があったため、闇雲に学ぶのではなく、どう効率的に学ぶかという点も意識しました。そこで考えたのは、実際にAIを活用した事例を社内でつくっていき、その実践の中で知識や技術を習得しようということです」とM.Tさんは、明確なビジョンを掲げて、一歩を踏み出した。

だが、思いに反して周囲の反応は冷ややかで、ときには「AIは本当に役に立つのか?やる必要があるのか?」「通常の業務に支障はないのか」という疑問や反対の声もあったという。そんな中で初期メンバーの一人として参加したM.Sさんは、忸怩たる思いを抱いていた。 「その頃感じたのは、AIに対する理解不足から、私達の活動自体も異質なものと思われているということです。でも、私自身、AIの可能性を信じていたので、周りの声はあまり意識せず、やるべきことをやっていこうと思っていましたね」

それぞれが様々な思いを抱く中、「誰に何を言われようとAI推進をやりぬく」という強い信念を持って、地道に活動を続けていったメンバー達。日々の業務を終えた後、自分達の考えを信じ、勉強会や事例創出に取り組む姿に心を動かされ、やがて新たなメンバーが一人、また一人と参加しはじめる。

データサイエンティストが加わり
活動はより大きく、さらに加速していく

少しずつワーキンググループへの参加者が増えてきた2019年、ワーキンググループをさらに進化させた「機械学習研究会」を立ち上げ、全社から参加者を募った。そのときに集まったのは、100名を超える有志だった。「同じ思いを持った仲間が社内にこれほどいたのか!」という驚きと嬉しさとともに、M.Tさんは、組織の将来、AI導入の将来を見据えた次の一手を模索。ちょうどその頃、多様なスキルや価値観を持つ人材が多く集まる東京で、「東京LABO」という技術組織を開設する計画が立ち上がった。その立ち上げに向けた人材を募集する際、AI推進に必要不可欠なデータサイエンティストを採用できないかと提案。そうして2020年、異業種で統計・データ分析をしていたY.Aさんが入社。機械学習研究会へも参加することとなったのである。

「私は異業界からの入社でしたが、AI推進というおもしろい取り組みをされていて、私の統計やデータ分析の力が役立てられることに魅力を感じました。データサイエンティストとして、プログラムの作成方法や社内AIツールの使い方の指導など、研究会メンバーが自走できるまで、手厚く支援したいとの思いを持って臨みました」 新たにデータサイエンティストという強力なメンバーを得て、機械学習研究会の活動はさらに加速。メンバーがそれぞれの職場で、AI活用に向けた事例の検討と実際の行動に次々と挑んでいった。

経営層にも認められ、
全社を巻き込んだ動きに変化する

Y.Aさんが入社する、少し前には、これまでの活動を大きく前進させる出来事が起きていた。それは、機械学習研究会を立ち上げ小さいながらも本格的に取り組んだ多彩なAI導入事例が10件、20件と積み重なっていく中、メンバー達が、AI活用事例共有会を行った時のことだ。その共有会の場に突如、経営陣が参加し、メンバーの発表に熱心に耳を傾けたのだ。
「実は、事例を先につくってしまった方が周囲の理解を早く得られるという考えで、すでに実現していた事例やその経過は社内に周知していませんでした。ですが、どこで聞いたのか、事例共有会の会場に役員の方々が来られたんです。そのとき、『ものすごく良い活動だね。これからももっと頑張って欲しい』と言っていただけました」(M.T)

この日を境に機械学習研究会の活動は、全社的に認知されるようになっていった。そして、経営層がAI推進の重要性を周りにも説き、サポートを惜しまないなどまさに強力な支援者となったという。

いま、ダイハツ工業のAI推進は、
DX化を盛り込み、新たなステージに進む

この出来事とY.Aさんの入社をはじまりとして、以前より機械学習研究会で行っていた勉強会を発展させ、2020年末には、ダイハツ工業社員専用のKaggle(※)コミュニティをつくり全社的なAI教育もスタート。全社員がAIを当たり前のように使える状態=「AIの民主化」をテーマとしたAI人材育成と、AI活用の前身となる社内の気運づくりにも取り組んだ。
そこから、AIによる管理部門の定常業務効率化や、開発業務のスピード化・省力化への挑戦へと広がっていったのだった。その活動の数々は、メディアにも先進的な取り組みとしてたびたび取り上げられ、ダイハツ工業がAI推進に本格的に挑戦していることを世の中に知らしめた。 2017年、わずか3人のワーキンググループから始まった活動は、その重要性が認められ、現在DX推進室 データサイエンスグループとして正式に会社組織化され、社内のAI推進を牽引する役目を担うまでに成長。ダイハツ工業の新しい時代をつくりだす組織として期待されるまでになった。だが、これはまだスタートラインに立ったに過ぎないとM.Tさんは考えている。そう、自動車技術の進化に終わりがないように、AI技術の進化にも終わりがないのだから。

(※)世界中のデータサイエンス・機械学習に携わる人たちが参加するプラットフォーム

エピローグ

「DX推進室では、2025年までに社内AIエキスパート人材を200〜300名育成することを目標に掲げており、AI導入を進めることで開発のコストダウンや効率化、高度化を実現し、お客様にさらなる良品廉価なクルマを提供するという使命を持っています。その意味では、まだまだ道半ばです。プロジェクトに際して苦労もありましたが、 “社員の挑戦を応援してくれる”、今回集まったメンバー達のように“多くのチャレンジ精神をもった社員がいる”というダイハツ工業の社風のおかげで、私もみんなもAIを社内に根付かせることができました。これは素晴らしいことだと思いますし、メンバーにも会社にも感謝しています」(M.T)
その言葉の通り、ダイハツ工業のAI推進は発展途上で、M.TさんやM.Sさん、Y.Aさん、また多くのメンバーが蒔いたタネが芽吹き、まさにこれから大きく成長し、花開くのを待つばかり。そして、プロジェクトに参加したメンバーが挑み、取り組んだ多くの事例と行動は、次のAIの担い手達の良き道しるべとなるに違いない。

プロジェクトから生まれた、様々なAI導入の成果&未来へのチャレンジ

事例1

エンジンのノッキングレベル判定のAIによる自動化に挑む!

佐野さん写真

車両性能開発部 動力制御開発室

M.S

2006年入社
工学研究科 電気工学専攻修了

当時開発試験を自動運転で実施することが多くなっていましたが、一部自動化が不可能な部分がありました。その一つが、エンジン筒内で発生する異常燃焼時に出る異音=ノッキングのレベル判定で、当時は人が実際に聞いて判定していました。私自身もこの業務を経験し、周りからも自動化できないかとの声を聞き、AIでの開発を進めていくことになりました。現在、一部の条件下での自動化を実現していますが、まだまだ課題も多くあります。今後は、全ての試験で使用できるよう、AIモデルの作成に必要なデータを集め、新たな特徴量の検討などでAIによる自動化の精度を高めていきたいと考えています。また、別の試験も自動化アイデアを出し、形にしていけたらと思っています。

事例2

製品不具合の原因の早期発見にAIを活用し、現場作業を効率化

花山さん写真

車両生技部 化成生技室

Y.H

2012年入社
システム工学研究科 マイクロ工学専攻修了

私が生産技術部門で担当しているのは、インパネやバンパーなどの大物樹脂部品に関する設備導入や生産準備です。日々の業務において、樹脂成形品の生産過程では、慢性的に発生する不具合があり、解決のために膨大な条件の中から熟練技術者が時間をかけて設備や金型を調べ、原因究明と改善をするという状況がありました。そのため、生産中の設備データを蓄積しておき、不具合との因果関係を調査する取り組みが始まりました。私はその膨大なデータを活用して、不具合の原因をAIで予測する仕組みをつくろうと決意。AI推進プロジェクトで学び、相談するなどして、実現にこぎつけました。こうしたAI導入成果は、ダイハツ工業の製造現場では初めてということで、社内で事例発表をしたところ、他部署からも評価され、横のつながりができたことは良かったです。

事例3

HPのFAQサイトの検索性を高めるため、AI活用に取り組む

岩下さん写真

サービス部 お客様サポート室

S.I

2009年入社
工学部 機械工学システム科卒業

お客様サポート室で業務をする中、気になっていたのは、「FAQサイトの情報を、もっとお客様が検索しやすくできないか」ということでした。そんなとき、当時の上司の「既存の問い合わせ内容をAIに学習させて運用し、その過程で集まったお問い合わせをさらに学習させていけば、どんな問い合わせにも迅速に答えられるようになるのでは」というアイデアを聞いて思い立ち、AI化に取り組みました。そうしてFAQサイトの検索窓にお客様がお困り事やキーワードを打ち込むと、AIが自動判断して、最も一致率が高い内容から順番に並べ変えて表示するように改良。お客様がスピーディに欲しい情報を得られることで、自己解決率を高め、電話での問い合わせ件数軽減にも貢献しました。

事例4

コネクトデータを活用し、お客様に寄り添ったモノ・コトづくりにつなげる挑戦

井山さん写真

車両性能開発部

K.I

2010年入社
工学部 動力機械工学科卒業

私の所属部署では、お客様に寄り添ったクルマの性能を開発することを目指し、市場データの分析・活用に取り組んでいます。その中で、お客様のクルマの使われ方を正確に把握することができれば、「お客様の不満を解消し、かつ、要望にお応えできる性能開発につながるのでは」と考えていました。時を同じくして、2019年発売のロッキーから、ユーザーがクルマやダイハツとつながるサービス「ダイハツコネクト」の提供をスタート。このサービスによって得られる膨大なデータを活用すれば、今まで以上にお客様に寄り添うことが可能になると考え、まずは正確な市場環境を把握するため、AIによる分析に取り組み始めました。まだチャレンジ中ではありますが、将来は、コネクトデータやAIでお客様がどのような「想い」を持っているかまで深く理解し、社員全員がお客様に寄り添える環境をつくっていきたいという目標を持って、日々AIと向き合っています。

事例5

CAEのアニメーションからAIで衝突安全性能を自動診断する

飯田さん写真

車両性能開発部 安全性能開発室

S.I

2018年入社
総合理工学研究科 工学専攻修了

私の所属する部署では、物理現象や試作部品などをコンピュータ上で再現し、設定した条件でシミュレーションできるCAEを使って衝突安全性能の解析・評価を行っています。とはいえ、当時は、CAEでつくりだした衝突時のアニメーションを、実際に開発担当者が目で見て性能の判断を行っており、人によって判断のバラツキがありました。そこで、結果のバラツキを無くし、目視での判断という労力を軽減させることをテーマにAIを用いた判断の自動化を考案。もともと独学でAIを勉強していたこともあり、プロジェクトメンバーの協力や応援も得て、アニメーションから自動で判断するAI化に成功。それ以降、部内のAI理解が深まり、また次のAI導入への動きが生まれようとしています。