2005年12月12日
ダイハツ工業株式会社
北興化学工業株式会社(以下 北興化学)とダイハツ工業株式会社(以下ダイハツ)は、貴金属(パラジウム)が自己再生する自動車用触媒「インテリジェント触媒」を、自動車以外の産業分野へ応用展開する。日本国内は北興化学が事業の主体となり、海外では北興化学が英国ベンチャー企業と共同で、全世界の医薬品を中心とした化学品メーカーへ同触媒の供給を開始する。
パラジウムは、自動車用触媒以外に医薬品・化学品の製造工程における触媒として広く使用されている。「インテリジェント触媒」はこれらの分野でも非常に有用であることから、北興化学は医薬品や電子材料などの化学品分野への用途開拓を強力に進める。同時に、北興化学は「インテリジェント触媒」を自社製品の開発・製造に活用することにより、同社のファインケミカル事業の柱の一つとして育成し、収益拡大を目指す。
【インテリジェント触媒を医薬品製造に応用した場合の有用性】
~「高い反応活性」と「長寿命」の両立~
高い反応活性を示すので、パラジウムの使用量を極限まで削減可能。
反応後の生成品と触媒の分離が容易で、繰り返し使用も可能。
温度、空気、湿気に対し極めて安定で、取り扱いが容易。
[参考資料]
有機化合物は医薬品やプラスチックなど、身の回りの様々な製品として広く普及している。有機化合物は「炭素-炭素結合」が基本であり、炭素を含む化合物同士を反応させる場合も、この結合を作ることが重要である。実際の化学工業においては、炭素-炭素結合反応を促進するために、パラジウムなどを触媒として添加するのが一般的である。
触媒に求められている性能
コスト : 少量の添加で反応を促進させる。
生産性 : 目的とする生成品を簡単な操作で効率よく得る。
安全性 : 生成品(特に医薬品)から触媒成分を分離・除去するための操作の簡便化。
このようにコスト・生産性・安全性の3条件を兼ね備えた触媒が待ち望まれていた。
2003年に有機合成化学の権威である英国ケンブリッジ大学のスティーブン・レイ教授のグループは、「インテリジェント触媒は、医薬品等の製造に用いられる有機合成反応にも、これまでにない高い活性を発揮する」ことを見出した。そこで、北興化学とダイハツは、ケンブリッジ大学(レイ教授とスミス博士)と共同で、自動車の排出ガスとは全く異なる低温の液体中という環境におけるインテリジェント触媒の研究を進めてきた。
さらに、北興化学のファインケミカルの開発ノウハウを駆使し、高い反応促進性能と低コスト、そして使用環境を選ばない柔軟性を併せ持つ触媒を完成させた。
今後も引き続きケンブリッジ大学との連携を強化し、インテリジェント触媒の持てる潜在能力の発現を目指す。
<パラジウム触媒の化学品製造への応用例>
医薬品 ・・・ 高血圧治療薬(血圧降下剤)、抗うつ剤
電子材料 ・・・ 液晶(テレビ、電卓、携帯電話用)、有機EL(デジタルオーディオプレーヤー、デジタルカメラ)
<北興化学工業株式会社の概要>
資本金 32億1394万円 東証一部上場、本社 東京
売上高 431億円(平成16年11月、連結)
事業内容
農薬事業:全農系(全国に3工場、研究所ほか)
農薬以外のファインケミカル事業:得意の有機合成技術を生かして触媒の他、医農薬中間体、電子材料原料などを製造販売(岡山工場、中国工場、研究所)