2005年10月06日
ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業株式会社(以下ダイハツ)は、独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下原子力機構)、株式会社キャタラー、北興化学工業株式会社と協力し、「スーパーインテリジェント触媒」を開発した。
この「スーパーインテリジェント触媒」は、ガソリン自動車用触媒に使用される3種類全ての貴金属(パラジウム・白金・ロジウム)に自己再生機能を与え、排出ガス浄化性能の劣化防止に成功したものである。
貴重な資源である貴金属の使用量の更なる大幅低減と同時に超低コストでかつクリーンな排出ガスの両立が可能となる。また現状で可能な限りの省資源・低コストを実現しており、今後の自動車用触媒のグローバルスタンダードとなり得るものである。
2002 年に実用化した「インテリジェント触媒」では、排出ガス浄化機能を持つ貴金属のうち、最も劣化しやすく使用量の低減が困難とされていたパラジウムに自己再生機能を持たせることにより、使用量の大幅な低減と触媒コストの削減を実現し、2005年9月末でインテリジェント触媒を搭載した車両は150万台を突破した。
今回開発した「スーパーインテリジェント触媒」は、「インテリジェント触媒」での基本コンセプトを発展応用させ、パラジウムの自己再生時とは全く違う新しい材料での組み合わせにより、白金・ロジウムに自己再生機能を与えることに成功した。
【スーパーインテリジェント触媒のしくみ】
~環境変化を敏感に察知して、自らの構造や機能を変え、常に適切な性能を発揮する触媒~
白金またはロジウムを、金属イオンとして酸素イオンと結合させて特殊な結晶構造(ペロブスカイト型結晶)を持つセラミックスにする。
形成された結晶は排出ガス内の酸素過剰・不足(※)に呼応し、酸素不足時には金属イオンが結晶から出て金属ナノ粒子を形成、酸素過剰時は結晶内へ戻るという出入りを繰り返す。
(※) ガソリンエンジンは通常、最適な燃焼状態を保持するために空燃比(燃料と空気の比率)を常時監視・調節している。この結果、排出ガスは1秒間に数回の頻度で酸素過剰・不足の状態を繰り返す。
この変化の連続が「排出ガスの熱で金属粒子同士が融合→金属の表面積が減少し、触媒としての浄化性能が低下」という現象を防ぎ、高い浄化性能を少量の貴金属で発揮・持続することが可能となる。
2002年にパラジウムの自己再生機能を実現した「インテリジェント触媒」はランタン・鉄により形成していたが、今回の白金・ロジウムはパラジウムと安定原子価数が異なるため、ランタン等を使用した結晶では十分な自己再生機能を発揮できない。
今回の「スーパーインテリジェント触媒」では異なる元素の組み合わせから成るペロブスカイト型結晶へ白金・ロジウムイオンを結合させ、自己再生機能を実現した。
なお、原子力機構は本技術の研究開発において、ペロブスカイト酸化物への貴金属の出入り(固溶・析出現象)を大型放射光施設SPring-8の放射光X線を利用して原子レベルから解析することにより、開発に科学的な方向性を指し示す役割を果たした。
補足資料