代表取締役社長 井上雅宏代表取締役社長 井上雅宏

サステナビリティトップメッセージ

「One Team」と「Keep Factory Running」を
原点に描く、ダイハツの未来

「One Team」と「Keep Factory Running」 ー私の原点と経営観

2024年、私はダイハツ工業の社長に就任しました。約38年にわたる社会人生活では、製造・営業・商品企画など幅広い業務を経験し、日本国内はもとより、カナダ・ブラジル・アルゼンチンなど海外の現場にも身を置いてきました。その中で私が経営の原点としてきたのが、「One Team」と「Keep FactoryRunning」という2つの言葉です。
「One Team」は、ブラジルとアルゼンチンの事業を担当した際に痛感した考えです。日本の会社として、南米ビジネスで言葉、文化、価値観も異なる中で現場が対立し、本来向き合うべき競合ではなく、内輪でエネルギーを浪費していた。そんな中、私は中立的な立場として双方の橋渡し役となり、粘り強く対話を重ねながら、互いの強みを活かし合う関係づくりに尽力しました。やがて信頼が芽生え、チームとして機能するようになった経験は、今も私の中に強く残っています。
「One Team」は単なるスローガンではなく、異なる立場や価値観を超えて目的を共有し、協力して進むための姿勢です。それを実現するには、現場での信頼づくりと対話の積み重ねが欠かせません。国内外に多くの拠点とパートナーを抱えるダイハツにとって、この文化はこれからの持続的成長に不可欠なものだと確信しています。
もう一つの「Keep Factory Running」は、カナダトヨタ時代に、営業チームの上司から繰り返し教えられた言葉です。どんなに優れた商品も、お客様に選ばれ、購入いただいて初めて意味を持ちます。お客様に選んでいただいてこそ製造や物流、サービスが回る。商品を届け続けることこそが、メーカーの存在意義だと私は考えています。

脱炭素に正面から向き合い、最適解を選択する

今、自動車産業は100年に一度の転換期にあります。カーボンニュートラルの達成に向けて、世界中で電動化が加速していますが、私は一貫して「私たちが向き合うべき相手は“炭素”であり、方法にはこだわらない」という視点を持ち続けています。BEV(バッテリー式電気自動車)が注目される一方で、その電力の多くが火力発電に依存している現実を考慮すれば、必ずしもBEVが脱炭素に直結するとは言い切れません。
トヨタグループは、「マルチパスウェイ戦略」によって、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV、燃費の良い内燃機関、さらにはバイオ燃料やエタノールといった多様な技術を持ち、国や地域の実情に応じた最適な選択を可能にしています。例えば、ブラジルではサトウキビ由来のエタノールで車を走らせており、電動化とは異なる形でカーボンニュートラルの実現に向けて対応しています。
また、ダイハツでは製造段階のカーボンニュートラルにも取組んでいます。牛糞由来のバイオガスを活用するなど、自然由来燃料を活用した取組みを展開しています。私たちは、現場の工夫と知恵を積み重ねることで、脱炭素を着実に進めていく企業でありたいと考えています。

“ちょうどいい”を支える──共創と人づくりの現場力

ダイハツの競争力の源泉は、「良品廉価」の実現力です。約600社に及ぶ仕入先様と密接に連携し、製品開発の初期段階からコストと品質を両立させる原価設計を行っています。今後、ハイブリッドや電動化技術の導入によって原価が上がる中、いかに付加価値を維持しながら手の届く価格でお客様に提供するかが鍵となります。仕入先様との関係を深化させることで、生活者にとって“ちょうどいい”車を提供し続けます。
一方、人材の育成も重要です。若手のうちから現場に足を運び、多様な職場・地域で経験を積むことが、長いキャリアの中で確かな判断軸を育てます。また、私は「お天道様が見ている」という言葉を大切にしています。努力する人が評価され、正しく報われる仕組みこそが、組織の信頼を支えます。性別などに関係なく、誰もがチャンスを得て力を発揮できる環境づくりを進めていきます。

ダイハツのモノづくりの力を世界の暮らしへ

サステナビリティを追求すること。それが、ダイハツが目指す世界につながる

国内市場は長期的には縮小が続くと見込まれますが、私たちには年間90万台という販売実績があり、これは守るべき基盤です。一方、海外市場は110万台を突破し、成長の中心にあります。特に、ASEAN諸国では、ダイハツ開発の車がトヨタやプロドゥア(Perodua)ブランドとして広がり、高い評価を得ています。
私が大事にしていることは、「ダイハツブランド」にこだわるのではなく、「ダイハツのモノづくり」を世界に届けることが目的であるということです。競争が激化する中、ブランド戦略は柔軟に、しかし設計・製造・品質の中核はダイハツとして譲らない。この役割を担うことが、グローバルなトヨタグループの中での私たちの存在意義だと考えています。
モビリティは一夜にして変わるものではありません。けれど20年、30年の単位で見れば、社会は確実に変化しています。ダイハツはこれからも、お客様に寄り添い、変化の兆しを見逃さず、“しつこく”現場を見つめながら、真に必要とされるクルマをつくり続けていきます。

OEM車・受託車・ダイハツ開発車を含む

ステークホルダーの皆様へ

ダイハツは単なる自動車メーカーではなく、地域の暮らしを支える存在であり続けたいと考えています。工場の一時停止が地域経済に与える影響は、私が肌で感じた事実です。それだけに、私たちには「Keep Factory Running」という責任があり、雇用や経済への貢献を絶えず果たし続けなければなりません。
また、近年は外部発信の機会が減ったこともあり、ダイハツのありのままの姿が十分に伝わっていないと感じていました。だからこそ、この「サステナビリティレポート」や新たにスタートしたオープンな社内報「ダイハツONE!」を通して誠実で、わかりやすく、そして親しみのある言葉でステークホルダーの皆様にありのままのダイハツをお伝えしていきたいと思います。
ダイハツは今後も、「世界最強の生活密着型自動車メーカー」として、地域、仕入先様、社員、そしてお客様と「One Team」を築きながら、持続可能な未来を切り拓いていきます。

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