2007年09月14日
ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業(株)(以下、ダイハツ)は、独立行政法人 産業技術総合研究所と協力し、従来、燃料電池車の電極触媒材料として欠かせなかった貴金属(白金)を全く使用せず、また、燃料には水加ヒドラジンを安全な状態にして使用することにより、CO2を全く排出しない燃料電池の新たな基礎技術を開発した。
この独自の燃料電池技術では、「省資源、低コスト」「高出力」「燃料の安全かつ容易な取り扱い」が可能となる。新燃料電池技術の特長は以下のとおり。
省資源、低コスト
現在の燃料電池車に搭載されている燃料電池は、電解質膜が強酸性のため高い耐蝕性が求められる。そのため、電極触媒材料に高価な白金の使用が欠かせない。加えて、その膨大な白金使用量は燃料電池車普及の課題となっている。(白金使用量:100g/台以上*1)
今回の新技術では、正反対のアルカリ性電解質膜を用いることにより、電極触媒に白金以外の安価な金属(コバルト、ニッケル系)、セパレーターなどの構成部品に安価な材料が使用できるため、貴重な資源である貴金属の省資源と大幅なコスト削減が可能となる。
*1ダイハツ調べ
高出力
従来、メタノール等の液体燃料を燃料とする燃料電池は、反応性が乏しく自動車に必要な出力が得られなかったのに対して、反応性に優れた水加ヒドラジンを燃料とし、電極触媒などを新開発することにより、白金使用の水素燃料電池に匹敵する0.5W/cm2*2の高出力が得られた。
*2ダイハツ社内測定データ
燃料の安全かつ容易な取り扱い
水加ヒドラジンは、液体燃料のため充填時の取り扱い性が良く、エネルギー密度が高いという特長を有する。また、CO2を全く排出しない、合成可能な循環型燃料である。
一方で、高濃度の水加ヒドラジンは毒・劇物取締法において劇物に指定*3されており、ガソリンや大部分の工業薬品と同様の安全性への対策が必要である。ダイハツは、安全に使用できることを目的に、燃料タンク内でポリマーによって水加ヒドラジンを固体化することにより、衝突等による燃料タンク破損時の燃料拡散が人体・環境へ与える影響を最小限に抑え、燃料電池の発電時には再度適時、適量の液体として使用する技術を開発した。
*3液体濃度30%超の場合
ダイハツは地球環境保全の観点から当技術の研究開発を加速させていくが、現段階では燃料を固体化するポリマーの性能向上、燃料電池の性能と耐久性の向上、インフラ整備などの課題が残されているため、関係各所と幅広くパートナーシップを結び、更なる研究開発を進めたいと考えている。
なお、本技術は化学分野で最高のインパクトファクターを誇るドイツの学術誌「Angewandte Chemie(アンゲバンデ ケミ)にて「Hot Paper(重要論文)」として認められた。