2001年12月11日
ダイハツ工業株式会社
ダイハツ工業株式会社は、自動車のボデーなどに使用される高張力鋼板の鋳鉄原料へのリサイクル率を向上させる新しい鋳造プロセスを岩手大学工学部および大阪特殊合金(株)と共同で開発した。
この技術(プロセス)により、高張力鋼板スクラップと普通鋼板スクラップを一括して回収することが可能となり、分別回収に必要な設備や手間が不要となるため、コスト低減や作業性の向上が可能となる。
高張力鋼板は、成分中にMn(マンガン)を多く含むため引張り強度が高く、板厚を薄くして軽量化が図りやすい鉄板で、最近では、軽量化・燃費向上を狙って自動車用ボデー材料への採用が急増しており、ダイハツでも、1998年の軽新規格以降積極的に採用を拡大し、現時点では車両に使用する鋼板の約35%を高張力鋼板が占めている。
ダイハツでは、資源を有効活用するため、プレス工程で発生する鋼板スクラップを社内の鋳造工場で使用しており、その量は原料全体の約40%を占めている。
しかし、高張力鋼板の成分の一つであるMn(マンガン)は鋳鉄成分に悪影響を与え、鋳鉄を硬く脆(もろ)くするという性質を持っているため、現時点では、高張力鋼板スクラップ量は鋳鉄成分に影響を与える程ではないものの、将来的に高張力鋼板の使用拡大を制限する可能性があることが懸念されていた。
そこで、岩手大学、大阪特殊合金らの協力を得て、鋳造工程において、Mg(マグネシウム)合金を添加する前段階でCe(セリウム)とS(硫黄)の添加剤を投入し、Ce-Mn-S化合物を優先的に成長させ、Mn(マンガン)の悪影響を防ぐ新しい鋳造プロセスを開発した。
これは、Ce(セリウム)がS(硫黄)との化合物を生成する際、Mn(マンガン)を取り込む性質があることを応用したものである。
この技術により、高張力鋼板のリサイクル利用がより簡易となり、資源の有効活用が促進できるとともに、鋳鉄原料内のMn(マンガン)を希釈するための高価な高純度鋼材の使用が不要となるためのコスト抑制も期待できる。
今後は、ダイハツだけでなく、同様の問題を抱える他企業に対しても依頼があれば当技術を提供し、高張力鋼板のリサイクル率の向上、省資源化に取り組んでいく。