2025.12.11

九州開発センター10年の軌跡と未来

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2025年10月24日、九州開発センターが設立10周年を迎え、地域の関係者の皆さんと一緒に記念式典を開催しました!
式典の様子と10年の軌跡について、インナーコミュニケーショングループの上垣内(ウエガイト)が取材してきました。

2025年10月24日、九州開発センターが設立10周年を迎え、地域の関係者の皆さんと一緒に記念式典を開催しました!
式典の様子と10年の軌跡について、インナーコミュニケーショングループの上垣内(ウエガイト)が取材してきました。

“想い”を紡ぐ記念式典

九州開発センター内のKDCホールで開催された記念式典には、関係省庁・行政、地域関係者、仕入先、大学など、多くのご来賓の皆さんにご参加いただきました。式典の後、ご来賓の皆さん向けに、九州開発センターの取り組み展示や開発現場の見学会も実施。その様子を動画でご覧ください。

キーマンたちが語る10年の軌跡

この10年間は、決して平坦な道のりではなかったようです。今回は、センターの立ち上げから現在までを支えてきたキーマンたちに、先行開発の歩みや当時の苦労、そしてそこに込めたアツい想いを語ってもらいました!

■ゼロからイチにする先行開発

松田さん 先行開発というのは、ゼロをイチにすること。量産開発の経験しかなかった自分にとっては、新しいことを生み出すという行為そのものが、非常に難しいことだと思いました。
江原さん 私は先行開発で大きな成果を出したわけではないので大それたことは言えませんが、先行開発と量産開発の両方を経験した立場から言うと、答えがあるかどうかも分からない領域で、自分で目標をつくってチャレンジする、という点が先行開発の難しさだと思います。ただ、たとえうまくいかなくても、携わるだけで考え方は大きく変わるので、必ず人材育成につながると思います。

松田さん 私もこれまでの経験から「先行開発には“失敗”というものはない」ということを学びました。そもそも答えがないことに挑戦しているので、それは“失敗”ではなく、成功するまでのプロセスでの“いち踊り場”のようなもの。最後までやり切って結論を出すことこそ、大事なのです。自分で考え、やり通した実績が、ある意味での“正解”。九州開発センターのみんなは、少なからずそんな経験をしてきていると思います。
江原さん 先行開発という領域は、量産開発とは“物理的な距離”が少しあった方がいいと思っています。場所が近すぎると、周りから「それは今やる意味があるのか?」という近視眼的な意見が入りやすく、一方で離れすぎるとコミュニケーションの溝が生まれ、別の問題が起きがちです。そういう意味で、大阪と九州は、ちょうどよい距離感なのかもしれません。加えて、先行開発と量産開発の双方へのチャレンジを促し、見守るマネージャーの理解は重要ですね。
松田さん 会社なのでルールや仕組みは大事ですが、ある一定の範囲で自由度を持たせる方が、いろいろな発想が生まれやすくなると思います。そこには物理的な距離も大事で、バランスを保ちながら進めることで、良いものができるのではないかと思います。

■新しい土地で新しい技術風土を作る時代

※画像をクリックすると、大きな画像が表示されます

小林さん では、設立から10年を振り返ってみましょう。2016年まではとにかく“速さ”と“変化”が求められた時代でしたね。当時は隔週でトップ報告があり、九州開発センターでの各開発や取り組みに対して、この場でいかに結果を出すか、ということに尽きました。この会議に向けて皆さんがブワッと来て、ブワッと去っていく……まるで嵐のような感覚でした(笑)。
松田さん 当時は“考えてから走る”のではなく、“考えながら走れ”の時代でしたね。“速さ”に対応するためには、従来のように理論武装して、綿密に準備してから動くという進め方では間に合わず、まずは動きながらトライ&エラーを重ね、考え、解決する、といった進め方に“変化”していく必要がありました。
そして、“速さ”と“変化”のベースにあった想いが “脱池田”——従来のやり方からの脱却でした。開発本体がある池田(本社)を否定しているわけではなく、池田でやってきたことをそのまま「是」とせずに、組織の在り方から開発の仕方まで、ゼロベースで見直そうという「きっかけ」になったと思います。

■独自基盤技術開発推進の時代

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小林さん 2016年後半から18年は“分断”と“結束”の時代。ダイハツが完全子会社化され、社内が大きく揺れ動きました。そして、九州開発センターの立ち位置も、ダイハツ工業全体の中で多方面から問われ始めました。我々は何ができて、何をするべきか、どうあるべきなのか。九州開発センター内のメンバーはかなり混乱し、みんなの気持ちが“分断”されていきました。
そこで私たちは一旦立ち止まって、まずは九州開発センターの課題をあぶりだそうと、仕事面、職場環境、人間関係など、さまざまな面についてメンバー全員にアンケートを取りました。そしてあぶり出された問題・課題をひとつ残らず改善するため、組織の壁を越えて全管理職がひざを突き合わせ、毎晩のように議論を重ねていきました。このときの、垣根を越えた本音の議論と改革の考動が、その後の九州開発センターの文化の基盤をつくった“結束”の時期だったのではないかと思います。

松田さん 本当にそうですね。九州開発センターは開発部門、生産技術部門、製造部門、コーポレート部門、現地(九州)採用者で構成されていた組織で、実は出身母体によって少しずつ考え方、ルールが違ったんです。その微妙な違いが、これまで少しずつ誤解や歪を生んでしまっていた。このタイミングで、全員一丸となって、一つひとつ丁寧に話し合って“決めて”いくことで、新たな化学反応が起き、結果的に池田(本社)とは全く違う新しい文化が生まれたと思います。異文化が“融合”し、九州開発センターの独自性が出てきた時期でしたね。
小林さん 議論のテーマとしては、しょうもないことも多かったですね……(笑)。
松田さん そうですね。作業ズボンの裾を折るのは外側か内側、どっちが正しいのか?………とか(笑)。
小林さん でも、なぜ外に折ったらダメなのか、私がこんこんと語ったり……。そんな小さなことから大きなことまで、時間をかけて全員と本気で会話しました。
松田さん 外から見たら「こんなことで管理職が時間を使っているのか?」と思われかねない議論もありましたが、そういう一つひとつの問題に真剣に向き合って丁寧に結論を出す経験は、九州開発センターの管理職にとって非常に良いトレーニングになったと思いますね。

■先々行技術推進と新事業開発の時代

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小林さん この時期は、“独自性”と“融合”の時代だったと思います。2016年からみんなで考え取り組んできたことにより、池田(本社)とは違う“独自性”が出てきた時代でした。
しかし一方で、九州独力で何とかしようともがいてはいたものの、独自性だけで独立できるわけはなく、部品ひとつを図面にしてモノにしてもらうにしても、池田(本社)の組織の協力がないと何もできないということも分かってきた。ですから、九州単独で頑張るのではなく、池田(本社)と“融合”しながら、ちゃんと出口につなげていくことが必要だと。そして、そのためにも自分たちのことを池田(本社)に知ってもらうことが必要だと感じ、先行開発の展示会を開催したり、九州開発センターの多様な働き方や職場環境の改革事例を池田(本社)に展開したり、積極的にいろいろな取り組みを発信していきました。

松田さん そうですね。感情が一気に盛り上がった、私が一番充実した時期かもしれません。特に2019年には、くらしとクルマの研究所(自動車技術を暮らしに応用研究する組織)が九州開発センターの一部組織と統合され、一緒に活動することになった。全く違う視点で進めている彼らを目の当たりにして、「ここまでやってもいいのか!」と気づかされました。それから何かタガが外れて……。
小林さん 遊びすぎて(笑)。

松田さん (笑)、それとこの頃から地域の方々や地元企業、そしてトヨタ自動車九州さんとのつながりを積極的に持ち、良い関係づくりを始めていきました。これは現在でも九州開発センターのメンバーに引き継がれており、今でも個人的に相談し合える関係が続いています。渉外活動はこれまで経験したことがなかったのですが、自分の成長に大きくつながったと思います。

小林さん 私もこの時期は面白かったです。「こういうことやりたいんです!」とリーダーが発信して、それに紐付く技術をメンバーと一緒に開発するといった、主体性をもった取り組みができたと思います。当時に取り組み始めたものは、現在も継続しているものもあれば、他の開発の基盤になっているものもあります

江原さん そうですね。例えば、コロナ禍のときに作った除菌装置「ミラクルバスター」は、自動車の排出ガスをプラズマにより浄化処理する技術を応用したものです。当初は「もう開発しないでいいだろう」と言われながらも、地道にひっそりと続けていたものが、こういう形でパッと技術を活かすことができました

この道の先に。

私が所属していたデザイン部でも、同じように量産開発と先行開発に分かれており、両者の物理的な距離感の必要性や人材育成に対する捉え方など、皆さんのお話を聞いていて共通する点が多いと感じました。ゼロからイチを創造する先行開発の生みの苦しみ、イチを10までに磨き上げていく量産開発の苦労は、クルマづくりには欠かせない重要なフェーズです。そして、ダイハツには技術やデザインだけではなく、さまざまな先行開発を担う組織があり、お客様のニーズを捉えた商品・技術・サービスの先行的な取り組みは、個人的にもどんどん応援していきたいと思いました。

次の十年に向けて、ダイハツグループ九州開発センターの挑戦は、世界をあっと驚かせる先進技術の開発と、地域社会との強い絆づくりを通じて、これからもまだまだ続きます!



▽映像制作:(撮影)岩本、山田、上垣内 (編集)上垣内  

この記事の登場人物

  • 開発基盤開拓部

    松田さん

  • 「三つの誓い」改革推進部

    小林さん

  • パワートレーン開発部

    江原さん

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