chapter1
現在の先進3分野の取り組み

小林 ダイハツは長い間、ガソリンエンジン車で低燃費を追求してきたため、HV(ハイブリッド)やEV(完全電動化)等の電動ユニット車の開発では残念ながら他メーカーの後塵を拝しています。環境配慮の面から世の中の動向がEV車へと向かっている中で、今、その両方を視野に入れた開発を急速に進める必要に迫られています。これらの実現をめざし、2017年1月に専任部署として正式発足したのが、電動ユニット開発部。私が統括するパワーエレキ開発室は、開発条件がより厳しいコンパクトカー用の電動ユニットを一日も早く形にするべく、メンバー全員で切磋琢磨している状況です。

薬師神 スマートモビリティー企画室も、小林さんの電動ユニット部門と同じ時期に新たにスタート。自動車に関するさまざまなデータを、自在に活用する方法や価値創造について模索を始めました。その一例を挙げると、例えば車の現在位置とガソリン残量から周辺ガソリンスタンドの情報が分かったり、さらに来店を誘う割引クーポン情報が車に入ってきたりなど。いわば自動車をスマートフォンのように使うために、何をどうすればよいかをゼロベースで考えていくような開発です。現在は鋭意事業計画を策定中で、これから実動へ移ろうという段階にあります。

増田ASV開発室ではお2人の部門よりひと足先んじて自動運転の開発を進めており、すでに衝突回避支援システムを軽自動車では最初に商品化しています。もっともこの領域はブレーキだけでなく、ステアリングの制御や車外対象物の認識機能ほか、開発のすそ野がとても広いのが特徴。自動運転とひと言で表しつつも多彩な技術の集合体になるため、今は一つひとつコアになる技術の確立に向けてトライ&エラーを繰り返している状態です。

chapter2
開発課題と強化ポイント

小林 ハイブリッド車は、一般的にガソリンエンジン車よりも開発および製造コストがアップします。大きくは電池、モーター、インバーターを利用するわけですが、それらを結ぶ多様なパーツに全体構造まで、多角的な側面からどうコストを抑えるかが一番の開発課題。いくら高性能なハイブリッド車をつくれても、高価過ぎると車両価格が跳ね上がってしまい、売れなくなりますからね。しかも、ダイハツの得意な軽自動車に載せる小型の電動ユニットに仕上げないといけないわけですから、「小さくするほど値が張る」を踏まえた技術開発のハードルは相当高いと言わざるを得ません。皆さんは当面の開発上でどんな課題を抱えておられますか?

増田 ご指摘のようなコストダウンは、自動運転でも至上命題として取り組んでいます。技術の追究と事業としての成立はコスト的に見て反比例する面がありますけど、そこをクリアするのが企業で働く開発者の使命ですしね。また、自動運転分野には他にも数え上げれば切りのない技術課題があり、なかでも迅速な対応を要するのが日進月歩する技術革新に追いついていくこと。自動運転がクローズアップされ始めたのはここ4、5年の話なのに、その間次々と新しい技術が学会等に発表されては応用へと動き出すサイクルがどんどん早くなっています。そんな状況下、文献に著された可能性をいち早く見出し、いかに実際の開発に導けるかを最大のテーマに置いています。

薬師神コネクティッド分野は自動車に前例のない機能を付加しようという取り組みなので、コストという観点から見れば、一定の投資が必要なことが大きな課題の一つです。というのも、スマートフォンなら利用者が通信料を払い、サービスプロバイダやアプリベンダは大きな投資をせずとも機器のデータを入手できるシンプルな構図ですが、自動車の場合はそうはいきません。通信費用を誰がどんな形で負担するのか、車載する通信機器はどうするのか、お客様に費用負担いただけるようなサービスができるのか。あらゆる方向から車にまつわるデータ利用を考え、利益を生み出すビジネスモデルの創出を推し進めねばならないのです。そうした車というハードウェアに留まらない、ソフトウェアも含めた開発が最も難しい点であり、特に力を入れています。

小林それぞれ担当する開発で、特有の課題があるようですね。電動ユニット開発ではその解決への第一歩として、インバーターやモーター技術をはじめとしたパワーエレクトロニクス分野をまず強化したいと考えているんですが、お2人はいかがですか。

増田先述したように最新の論文資料をひも解くことから始まるような開発なので、第一はその技術内容を正しく理解できる人材の発掘です。そこから協力し合ってダイハツ独自の自動運転技術に活かせるものを見つけ出し、具現化へ素早く着実にステップを刻んでいくこと。今はそれしかないと思っています。

薬師神私の部門では、とにかく無線通信やサーバ周りのネットワーク、セキュリティ、データの活用、アプリ含めたサービス開発に関する知見を広げることですね。自動車メーカーとしてはこれまでほとんどノウハウがない分野なので、そのような外の世界の専門知識を早く導入しなければいけないと思っています。

小林結局、先進3分野においては今のダイハツに不足している力を早急に補うことが一つの重要なポイントと言えますね。他社で活躍されたキャリア採用エンジニアへの私たち3人の期待度は、ほかの部署の群を抜いて大きいかもしれません。

chapter3
こんな人材に集まってほしい

小林 ところで、皆さんはともに働く経験者採用の人材について、どのような人を希望されているのでしょう?

増田 考え方として、自動運転は事故のない車社会の実現をめざすものなので、何はともあれその点に共感を抱いてチャレンジできる人です。能力的には常に新しい技術に興味があり、機転を利かせてそれをクルマの機能に転化していける力を持った方が望ましい。現段階では模糊とした開発場面も多々あるため、ベースになる数学知識を駆使して工夫できる人が最高だと思っています。

薬師神通信やサーバに関する知識、アプリケーションやインターフェイスの開発経験など、ICTに関連した専門力を持つ方々、分析含めて色々な意味でデータを処理できる能力をお持ちの方々を幅広く求めています。欲を言えば、それら全体を融合させて新しいビジネスモデルを考え出せるような人がベスト。さらには自動車を次代のモバイルツールととらえる発想で、社会にかつてないサービスを創造しようという気概を持った人に来てもらえるとうれしいですね。

小林最後に私の部門が求める人材を挙げますと、まずはパワーエレクトロニクスのエンジニア。先ほど課題に挙げたようなインバーターやモーター、電池、さらにそれらの制御に関する造詣が深い人を特に求めています。しかし、ほかにもトランスアクスル、ギア類、板金やハーネスなど多岐にわたる部品の技術開発が必要なため、それらの経験を持つエンジニアにぜひ参加してほしいのが本音です。それぞれで専門分野を存分に活かしてもらいながら、徐々に担当する部分の幅を広げていただき、開発部門一丸で優れた電動ユニット車を完成させたいと考えています。